断章のグリム

泡禍とは神の悪夢。
悪夢の種は人々の共通の記憶を元型として人の心に沈み、童話の形を取って残酷劇へと花開く。
たいていは関係者全員が人間以外のものに変容してしまい、生き残った者たちは心を病むか、自分に脅えながら余生を送る。
これは、そのどちらも選ばず、歪な心を抱えながら妥協の余地のない泡禍との闘いに身を投じる騎士たちの物語。
 
白状すると、怖い話と煮詰まった話が苦手です。
面白い面白くない以前に、読み進められないのです。面白くてもその手の方向に話が進むとダメ。もう見てらんない。最近だとひぐらしやサーラ最終巻がなかなか進まなかったり。
そんな俺でも、この話は一度も止まらず読み終わりました。
人々の醜悪さに魅かれました。
哲学や心理学、民俗学を用いた童話の解釈が作中で行われます。でも、そんな知識は無くても蒼衣たちの想いは必ず伝わります。題材は誰もが知る童話で、泡禍は誰もが持っている負の感情の具現化した姿なのだから。