スニーカー大賞選考者はなんでこうヒネった話が好きなんだ?
 
結論から言って、悪くはない。あらすじ読んだ時には核地雷かと思った(というかそれを期待して買った)が、話の出来そのものは特に地雷と呼ぶほどひどいもんでもない。まだキャラ紹介がてらの序章だし。むしろ主人公視点の淡々とした語りは周囲のド派手さと好対象でいい感じ。
この本の賛否を分けるのはサブタイトルにもある「記号」だ。
ストーリーからガジェット、キャラ作りまであれこれパクってツギハギしてるところがこの本のミソで、属性やアーキタイプを並べて話を作ることが前提になっている。キャラを表現する「記号」というものが、使い古されて手垢がついたのを通り越して、漫才におけるボケとツッコミの役どころや時代劇の45分タイムと同じく受け手が知っていて当然の基礎知識として扱われる。その上でこれでもかってくらい過剰に並べられた記号的表現がどう料理されていくのかが読みどころな訳なんだが、そこにたどり着く前に相当な人数が脱落すると思われる。
属性萌えやお約束を知らない人。
オタク文化を嫌う人。
小説に記号的表現が使われるのがイヤな人。
荒唐無稽な不条理展開についていけない人。
これをクリアして初めて面白いかつまらんかを判断するのだから、高評価をつける人が少なくなるのはある意味あたりまえ。これが市場に受け入れられると考えたうえで大賞にもってったんだとしたら、選考者の判断は英断とも自家中毒とも言える。単にサブカル受けを狙ったんなら選考者を替えたほうがいい。
 
同人パロディの大半が似たようなことをやってる状況で、オリジナルの小説がそれをやりだしたってのが画期的……ってことなのかね。エピックファンタジーがもてはやされた時期にスレイヤーズが出たようなもんだろうか。評価としては今のところ未知数としか。ウダウダ書いた割に煮え切らない結論で申し訳ない。