のぼうの城

のぼうの城

のぼうの城

戦国末期、西を平らげた秀吉が関八州に兵を向ける。世に言う小田原評定で右往左往を繰り返す北条家を尻目に、関東平野に点在する中小の城は次々と秀吉の手に落ちていった。その中で唯一、小田原城が陥落した後までも抗戦を貫いた城があった。
忍城。水の城、浮き城の異名を持つ武蔵の小城。
小田原城に召喚された城主に代わって留守を預かった成田長親は、何一つ満足にできず領民にすら「でくのぼう」呼ばわりされる手合いだったが、誰からも愛される人柄だったと言う──。


こいつは新時代の歴史エンターテイメントだ!
起きた事象は史実に忠実でありながら、その内容は痛快無比。人物像を再解釈することで痛快な物語に仕上げるという、従来の歴史もの(演義もの?)と同様の手法を採りながら、当時の常識に縛られない大胆な再解釈が他と一線を画している。
現代人にも通用する再解釈というのは往々にしてマンガっぽくなりがちなんだけど、この本は言ってることもやってることもあくまで泥くさくカッコわるく、それでいてものすごくかっこいい。そのバランスが類を見ないということで話題になってるんだと思う。
「どう違うんだ?」という人には、水の城―いまだ落城せず 新装版 (祥伝社文庫)も併せて読んでみよう。こちらもストーリーは全く同じ。従来の歴史ものを突き詰めた秀作。でもライトノベル読みである俺は断然のぼうの城のほうに軍配を上げる。こっちは爽快さが全然ないんだもん。
日本史好きには変化球のひとつとしてお勧め。ラノベファンには歴史ものとラノベを繋ぐ一冊としてぜひお勧め。